『歪と赤と銀と』
ガチャ…
「ボ――ぅぷっ!?」
ドアを開け、中をのぞいた0.2秒後、灰皿らしきモノが飛んできた。
けっこう本気で痛ぇ。
下手したら死ぬぞぉ!?マジで。
「う゛ぉ゛ぉ゛い゛!!」
「うっせぇ。カス。」
「うっせぇじゃねぇ!!カスじゃねぇ!!何投げつけてんだよ!!!」
床に落ちた凶器――やっぱり灰皿だった――を指さしてオレは怒鳴る。
「10時に来いっつっただろ。」
「あぁ?」
10時に合うように来たっつーの、そう思って時計に目をやると
10時00分43秒。
「ぴったりだろ!!」
「お前が来たのは10時00分05秒だカス。」
「う゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぃ!!!何だそりゃ!!」
「遅ぇんだよ。カス。クズ」
無理だろ。10時00分00秒とかよぉ。
絶対無理だろ。意味わかんねぇ。
どれだけ自己中なんだよ。オイ!!
「…っ…う…」
ガツン、とか、ゴリ、とか音がする。
結局また殴られてる。
あー痛ぇ。ただ殴りたいだけじゃねぇか。
「…っとに使えねぇ。」
ゴッ
「…っうぁ…」
ギシギシ骨の軋む音がする。肋骨の一本くらい折れそうだ。
こいつの趣味はオレを殴ることだ。
ぜってー間違いない。
ガッ
見てわかる。どんどん機嫌よくなってる。
知ってんだって。コレも愛情表現。
歪んでるけどボスなりの愛し方。
んで、気がつくとこれが快感になってるオレがいる。
やっべぇ…オレ変態だ。
ゴッ
ボキィッ
「…あ゛あ゛あ゛っ!!」
あ、骨が折れた。多分…。
痛ってぇぇぇ!!!
加減しろよぉ。痛ぇだろぉ…。
あーくそ。笑ってやがる。
前言撤回だ。
こいつは人を痛めつけるのが好きなだけだ。くそ。
でも、オレはぜってぇボスから離れらんねぇんだよな。
きっと。
(c)POT di nerezza A.Y I.A H.K