子猫。
 子猫。

 何処へ行くの?











  迷子の子猫












 「キール?」
 家に帰るといつもそこで自分を迎えてくれる恋人が姿を現さなかった。
 「…どっか行ったのか?」 
 そうだとしても一人でどこかへ行く筈はない。だって彼はまだこの世界に来てまだ間もない。
 一人で出歩くには余りに危険すぎる。
  それは彼もわかってるはずだった。
 「…おいおい…」
 こんな状況なら思考が暗い方向に行くのも無理はない。
 「…キール…ッ!!」
 待ってるなんて性に合わない。
 学生鞄を玄関に投げ出して、制服のまままた玄関から外へ駆け出した。





 ハヤトは記憶を手繰り寄せて、キールの知っている道をくまなく探した。
 道行く人に声をかけ、キールの特徴を伝えて聞き込みもした。
 結構目立つ容姿をしているし、なんせこの世界になれていないためなのか案外情報はいっぱい集まった。
 
 集まったのだが…

 「なんで、いない?!?!」

 情報を頼りに色々と巡ってはいるのが、不発。ことごとく不発。
 「…おいおい…何してんだ…キール…」
 話を聞く限りだと、下を向いて何かを追っているみたいだったと聞き込んだ人は皆そう言った。
 小走りで、何か小さなものを追うように。
 「…どこだよ…っ」
 そう遠くはない。大丈夫。
 そう言い聞かせて再び足を動かした。





 もう少しで夜になろうって時にやっと見つけた。
 人気のない公園に一人ベンチに座っていた。足元には小さな猫がいた。
 「…」
 そいつを追っていったのかと、合点いって最後の力を振り絞ってキールに駆け寄る。
 切なそうに夕暮れを眺める恋人の下へ。
 「…ッキールッ!!」
 「…ハヤト…?」
 安心したような、申し訳なさそうななんとも微妙な表情をするキール。
 「…っんのバカ!!俺がどれだけ探したと思ってんだ!!」
 「ごめん。追いかけてたらつい…」
 「…なんで猫なんで追ってんだ…」
 「…ハヤトみたいだな、って思ったから」
 「…はぃ?」
 予想外の答えにさらに脱力。もう疲労もピークなのでキールの隣に座り込む。
 ブレザーはすでに脱いでいたし、ワイシャツも袖をめくったり、ボタンを外したりしていた。
 「…で、何が俺みたいだって?」
 「この猫」
 「…わけわかんない…」
 「気まぐれで、宛てもなく歩いてて、つい放っておけなくて」
 苦笑いのようで、そこか愛しさを帯びた笑みを見せる。
 「可愛いだろ?」
 「そりゃあ…な…うん」
 渋々というように同意するハヤト。
 「勝手に出て行ったことは謝るよ」
 「そうしてくれ。じゃなきゃ俺の労力は水の泡だ…」
 はあ、とちょっと大げさにため息をつく。走り回っていた所為で頬は上気していて、額には汗をかいている。
 夕暮れの空に吹く風が気持ちよかった。
 「探し回ってくれてありがとう」
 「…どういたしまして」
 あたりまえだろ、とか言いたかったけど言わなかった。
 「…ハヤト」
 「暑い…キール…」
 軽く横から抱きしめられた。
 「好きだよ」
 「…うん」
 暑いけれど、キールの胸に体を預けてハヤトは幸せそうに笑んだ。






 しばらく二人でそうしていて、帰ろうとした時に気づいた。
 足元に居た猫はいつのまにか居なくなっていて、どこか知らないところに行ってしまっていた。
 「…寂しい?」
 「ううん」
 キールは首を振る。今日一日の小さな旅の友達を心の中で思う。
 そして笑顔で言う。
 「僕の猫はココに居るから」
 「…俺のこと?」
 訝りながらも聞くと、笑顔でキールは肯定した。
 「僕が一番目を離しちゃいけない猫は君だからね」
 「…恥ずかしいことを…っ。もう、いいっ。帰るぞ」
 「うん」
 先に歩き始めたハヤトの頬は仄かに赤くなってる。
 先に歩くハヤトに遅れをとらないようにキールも歩き出す。
 「ハヤト」
 「なんだよ…?」
 「手、つなごう?」
 「…ん」
 少し恥ずかしそうにしながらも手を差し出して、キールの指に自分の指を絡めるハヤト。
 その絡められた小さな手を握り返すキール。
 「…今日の晩御飯何にしようか」
 「そーだなぁ…」
 小さな公園、手をつないで夕暮れに照らされ伸びる影が二つ。
 とても幸せそうだった。












 子猫。
 子猫。

 何処へ行くの?

 帰るところは見つかったかい?

 どうか伸びる影が一つではないように、と。

 願っているよ。












 ▼あとがき▼

 4600HIT THANKS!!

 えっとですね、夜月はですね、サモ1をプレイしたことありません。
 ちなみにキャラやら設定も詳しく知りません。
 なのに執筆。
 …キャラが偽物なのには目を瞑ってください。

 ハヤトは猫みたいで、キールはへたれだけど押しの強い人。
 …が、夜月の見解です。

 …言い訳はいたしません!!!
 ささげます!!海神風璃様に捧げます!!

 再度4600HIT感謝いたします!!
  





 


                                                                                          (c)POT di nerezza A.Y I.A H.K  
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