つい先日。ルヴァイド様と喧嘩しました。
 依然険悪ムードの続く中、やっぱり僕も悪かったということで・・・仲直りをしたいと思いました。
 ・・・はい。結構痛いです。

 辛い、です。
 ルヴァイド様が話してくださらないと。







  ―ズルイ男の切り札−






 そろりと、イオスは自分の部屋の前にいた。ここは自分とルヴァイドの部屋だったから、ルヴァイドが今外などにいないことから
 中にいるのだとわかる。
 仲直りをしたくてそこに立っていたけど、なかなか踏み出せない。
 「・・・ふー・・・」
 深呼吸を一度して、ドアノブに手をかけるも。
 「・・・うぁ・・・だめだ・・・」
 くるりと背を向けて、忍び足で階段まで戻る。我ながら女々しいものだ。
 仲直りはしたい。ルヴァイドとかれこれ三日は口をきいた覚えがない。いい加減寂しいのだ。
 でも、ルヴァイドは何も言ってこない。それもなんだか悔しくて、でも、話したくて。
  抱きしめて、ほしくて。
 「・・・うう・・・」
  仲直りの証としてアメルに教わりながら初めての手料理も作ってみた。見た目はよくないけど、味は大丈夫なはずだった。
 「・・・はあ」
  ・・・大丈夫な、はず。
 自信喪失していくと共に、意志が薄らいでいくのが解る。もんもんと湧き上がる思考に頭がついていかなくて、止まらない。
 整理がつかなくて、どんどん気持ちが沈んでいく。
 「・・・ほんとうに僕って愛されてるのかなぁ・・・」
 ポツリと呟いたその言葉が、自分の思考をさらに奈落へを落としていく。
  
  愛されてないんじゃないか。

 なんて、考えてしまう。
 でも、首を振ってそんなことはないと否定する。ありはしない。
 「・・・よしっ」
 四の五の言わずにいい加減覚悟を決めて行こうと思った。自分だって男だ。ここらへんで覚悟を決めなくてはならない。
 再びドアの前に立った。しかし、やっぱり開ける事はできなかった。
 「・・・っ・・・はあ・・・」
 女々しい。女々しすぎる。なんだか、泣けてきた。
 「お前いつまでそこにいるんだよ、ったく」
 「・・・っ?!」
 突然聞こえたその声に振り返る。そこにいたのは自分よりも小さな生意気な悪魔の少年。
 不服そうに不機嫌そうにそこに立っていた。
 「・・・っなな・・・なにしてるんだ!」 
 「てめぇこそ、なぁにずっとドアをにらめっこしてんだよ」
 「・・・そ、それは・・・」
 いきなり恥ずかしくなって頬が染まっていくのがわかる。バルレルはにやにやと意地悪そうに笑うと、イオスのが手に持っていた包みを開けた。
 「うわっ、何するんだ!」
 「・・・ふぅん。女々しいんだなぁおまえは」
 「・・・わ、悪いか?!」
 「べぇつにぃ?それよか、さっさと行け。見てるこっちが苛々すんだよ」
 「・・・って、見てたのか?」
 「ったりめぇだろ?いつまでたってもウジウジウジウジしてるからだろぉが」
 「う・・・うじうじ言い過ぎだろ?!」
 「ってか、女々しい」
 「んぐっ」
 言葉につまり何も言い返せないイオス。言い返そうにも事実のために言い返すことができない。悔しい。
 「で、それアイツに渡すんだろ?」
 「・・・あ、ああ・・・」
 「んじゃ、ちゃっちゃと行け」
 「か、軽軽しく言うな!!何度試したと思って・・・うわっ!!」
 「だぁーーー!!めんどくせぇ!!ちゃちゃと行け!!腐っても男だろぉがよ!!」
 勢いよくドアを開け、イオスを蹴って中に押し込んだ。フンッと鼻を鳴らしてドアを閉めた。
 「ったた・・・」
 

  「・・・イオス?」


 「る、ルヴァイド様・・・」
 久々に聞く声。心に染みて、理由もなく泣けてきた。でも、まだ泣く訳にはいかないんだ。
 「・・・どうした?」
 「あ、あの!!」
 読んでいた本を閉じ、イオスの方に駆け寄るルヴァイド。座り込むイオスにあわせ、片膝をつく。
 「・・・っ・・・ご、ごめんなさい!!あのっ僕が・・・その・・・変なヤキモチ焼いたばっかりに・・・っ。ルヴァイド様にまでご迷惑をおかけしてしまって・・・。
 だから・・・そのっ!仲直りがしたくて・・・っ!!」
 「・・・俺は怒ってなどいないぞ?」
 「へ?」
 素っ頓狂な声をあげるイオスに小さく笑いを漏らすルヴァイド。
 「ヤキモチを焼いたということは、よほど俺のことが好きなのだろう?お前は不器用だからな」
 「・・・じゃ、じゃあ・・・っ!!僕が一人でてんぱっていたといことですか?!」
 「そういうことになるな。なかなか面白かったぞ」
 なんだかよくわからないが、一人で空回りしていたことに恥ずかしさを覚え、頬がさらに真っ赤に染まった。
 「ひ、酷いです!!ルヴァイド様は・・・ズルいです!!」
 「ずるくて結構」
 「・・・うぅ〜・・・」
 クスクスと笑うルヴァイドが憎らしくて、ふいっと顔を逸らした。こんなことならこんなモノ作ってくるんじゃなかったと心の中で少し後悔した。
 そんなイオスを見て愛おしそうに目を細め、また笑いを漏らすルヴァイド。
 「イオス」
 「・・・なんですか」
 紅く染まる頬をその大きな手で包み込み、ウサギのように紅い瞳を見つめ、柔らかなその唇に口付けた。
 ルヴァイドに丸め込まれるこの状況が若干不服だったのか、イオスは少し抵抗をしたが懐かしいその感触にいつしかそんなことを忘れていた。
 「愛しているぞ」 
 「・・・僕もです」
 囁かれる愛の言葉は嘘ではない。
 「でも、やっぱりルヴァイド様はずるいです・・・」
 「そんなものだ。お前に限りだがな」
 「・・・よくもそんな恥ずかしいセリフを真顔でさらりといえますね・・・。ある意味尊敬します」
 「・・・そうか?」
 イオスを抱きしめながらそんな会話を交わしている最中に、イオスの後ろに小さな包みを発見した。
 「これはなんだ?」
 「う、わぁ!」
 イオスがそれを掴むよりも早く、ルヴァイドはそれを掌中に収めた。またイオスの頬が紅くなる。
 それを気にもせずルヴァイドはその包みを開けた。
 「・・・お前が作ったのか?」
 「・・・初めてですから、その、上手くいかなかったかもしれませんが・・・一生懸命作ったんですから、笑わないでください・・・」
 包みの中にあったのは、アメルが得意とするおイモのケーキ。勿論アメルのようにキレイにはできていなく、ところどころ焦げていて、
 形もちょっと歪ではあったが、その分のイオスの頑張りが伺える。
 「・・・その手」
 「え、あ、あの・・・慣れない物を使ったもので・・・」
 ぱっと手を隠すイオス。慣れない料理の所為で傷だらけになった指。軍人のくせに白く綺麗な指に包丁で切ったであろう切り傷が無数にあった。
 「あ・・・」
 隠したその手をルヴァイドは手に取り、優しく口付けた。
 「・・・ありがとう」
 「・・・ルヴァイド様」 
 「なんだ?」
 「食べてくださいますか・・・?」
 「ああ。勿論だ」
 イオスは嬉しそうに笑ったが、やっぱり味に自信がないのか少し不安が残る表情をしていた。
 ルヴァイドはケーキを丁寧に包みから出して、一口食べた。
 「・・・ど、どうですか?」
 「美味いぞ」
 「・・・ほんとですか?」
 「ほんとだ」
 「・・・よかったぁ・・・」
 ほっと胸を撫で下ろすイオス。それから二人で他愛もないことを話して、幸せムードに包まれた頃。

 ケーキを食べ終わりその包みをごみ箱へを捨てたとき。

 「さて、イオス」
 「はい。なんでしょう?」
 「あともう一ついただきたいものがあるんだがな?」
 「・・・はい?」
 「有無を言わさずにいただくことにするがな」 
 「・・・えーっと、ルヴァイド様?あのぉ、今その・・・なんで僕は床に押し倒されているんでしょうか・・・?」
 「よくあることだ」
 「あ、そーですね。って、そうじゃないですよ!!ちょ、待ってください・・・っ」
 「待たん。三日も耐えたんだ。誉めてほしい位だな」


 そして、有無言わさずに久々の営みに精を尽くしたルヴァイドと、尽くされたイオス。
 そして、思うは只一つ。

 「やっぱり・・・ズルイですよ・・・」

 愛ゆえに、諦めろ。







 ズルイ男の切り札は
 愛する者の愛なのです。


















▼あとがき▼

 1300HIT感謝!藍薙 維麻様に捧げます!
 リクはルヴァイオ甘甘だったんですが・・・。なんだろう。微妙な甘さ。
 苦情は受付いたします・・・。喧嘩上等。

 って、副管理人なんですけどね。ま、いっか。

 はぁい。再び感謝いたします☆

 では!

                  夜月哀那





 

  








                                                                                          (c)POT di nerezza A.Y I.A H.K  
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送