――あわれ君はゆき、我はただひとり――



「・・・・・・・・・・・・・・・」
僕は木の後ろから笑顔のニーニャを見てた。
「・・・・・・パスゥ・・・・・」
パスゥはいない。とはわかっていても、ニーニャにパスゥを探してしまう。
「違うよ・・・・・・」

―――違う。

僕のパスゥはそんな風に笑わなかった。
もっと、キャハハって軽く声をあげて笑ってたんだよ。
無邪気に。

「パスゥ・・・・・」
どうして僕を置いていったの?苦しいよ。パスゥ。

『ずっと一緒だよ?』

そんな言葉を交わしたのはいつ?
もうずいぶん前みたいだよ。

触れたい。

今すぐ君に。

柔らかいほっぺに。

しなやかな長い髪に。



「どうして・・・」


涙がポロリと落ちてきた。愛しい。
ニ―ニャの声・・・姿・・・。
「パスゥ・・・・」
パスゥと同じなんだ。全部・・・。
でも君はパスゥじゃないんだよ。

「会いたいよ」
胸が痛い。痛いよ。

「パスゥ・・・帰ってきてよ」
さっき拭った涙がまた溢れてる。拭うのも面倒だ。
僕はニ―ニャにあえないよ。会ったら言っちゃいそうなんだ。

『君が消えればよかったんだ』

そんなの・・・可哀想だから。ニーニャはなにも悪くないんだ。
「パスゥ・・・」
僕の気持ちとは反対にキラキラ輝く太陽に光に何かが反射した。
「うわっ・・・」

あれは・・・。
ニ―ニャの髪留めに光が反射してた。
でも・・・あれは・・・。
「パスゥの・・・?」
居なくなっちゃう少し前の夜にしてたやつ・・・。
「パスゥ・・・」
パスゥの髪留めだ。
どうしよう。涙が・・・涙が止まらないんだ。
僕を置いていかないでよ。ずっと一緒って言ったじゃないか。
「愛してる・・・から・・・。僕も連れて行ってよ・・・」
どうして僕の前から消えちゃったの?
僕はどうすればいいの?わからないよ。
教えてよ。

  ――――――ぽんっ

「・・・エッジ・・・?」
「ガブリオ・・・」
「エッジ・・・僕はどうしたらいいのかな?」
「ガブリオ・・・」
「パスゥが・・・パスゥがいなんだよ・・・」
「ガブリオ。ねぇ。落ち着いて」
「僕の・・・僕の大切なパスゥが・・・」



  ――――――――――――いないんだ。



「ガブリオ!!しっかりすんるんだ!」
「エッジ・・・・・・」
「パスゥはもういない。どこにも」
「やめてよ!!」



  ――――――――――――もう。やめてよ。



「僕のことはもう・・・・放っておいて!」
「ガブリオ・・・」

エッジ・・・君に僕のなにがわかるって言うんだ!?

「僕がどれだけ苦しいか、君にわかるの?!」
「わかるよ!」
「わかる訳無いよ!」
わかる訳無いよ。誰にも。
「僕のことはもう放っておいて!!」




走った。何処まで行くのかわかんない。
僕はどうすればいいかわかんない。
僕は独りになちゃったんだ・・・。
ただ・・・独りに・・・。
「ひとり・・・?」
エッジは?みんなは?本当に・・・僕は独りなの?
わかんない。




「君が行っちゃうから!」



空に向かって叫んで
パスゥに聞こえるわけないけど。
「僕はどうすればいいの?」
教えてよ。
一度止まった涙がまた溢れてきた。
「一回死ねば・・・君のところにいける?」
腰に下げた剣で首を裂けば・・・君の所に行けるの?
「君に・・・会いたいよ・・・」
そうだよ。僕は弱虫なんだ。僕は。
死ぬことなんてムリだよ。
「君に・・・会いたい・・・」
だから・・・
君に会う方法を探すよ。
信じれば・・・待てば・・・きっと・・・。



「会える日がくるよね?」


なつかしの地で、君をいつまでも待つよ。

パスゥ・・・。







・・・愛してる・・・。





END







あとがき。

「帰れソレントへ」を題材にして書いてみました。
なんだかとても難しかったです。
終わらせるのが大変でした。
でも、一人でなんか悲しかった。
ガブが。
ガブの気持ちを一生懸命考えて。


      あわれ君は行き
      我はただ一人
      なつかしの地にぞ
      君を待つのみ


頑張りました。
・・・終わります。はい。
それでは。


藍薙維麻








                                                                                          (c)POT di nerezza A.Y I.A H.K  
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送