名前を呼んで
「カス。」
「…」
「おい、カス。」
「…」
「カス、きこえねぇのか!」
「…っ…」
ガツン、という鈍い音とともに、スクアーロは床へと崩れた。
「てめぇ、返事はどうした。ドカス。」
「…」
「…ちっ…」
ガツン。
もう一発。
「カス、てめぇ、この俺を無視するたぁ、いい度胸だな。」
「…るせぇ。」
「あぁ?誰がうるせぇだと?」
ガツン。
さらに一発。
「…ぅ…」
「どういうつもりだ。カス。」
柔らかな銀糸を乱暴に掴んで、ザンザスはスクアーロの顔を上げさせた。
その瞳に宿るのは、明らかな苛立ち。
「…答えろ。どういうつもりだ。」
低く、唸るように答えを促す。
「…るせぇ…よ…。」
「…黙れカス。おとなしく質問に答えやがれ。」
腹いせにもう一発殴り、重ねて問いかける。
涙目になって、つらそうに眉を寄せるスクアーロを多少心配してはいても、ザンザスはそれ以外に方法を知らないから、である。
「…じゃ…ねぇ…」
「あん?」
不意に、聞こえたか細い声に眉間の皺を深くして、スクアーロの顔をさらに覗き込んだ。
「カス、じゃ…ねぇ…」
ぐすぐすと鼻を啜りながらスクアーロは言う。
「名前、呼べよぉ…ボス…」
「……!」
弱々しくそう言われて、流石のザンザスもほんの少し(あくまでほんのすこし)だけ、罪悪感が生まれたらしい。
「…くそ。」
散々殴って、すでに色が変わり始めた頬をやさしく撫でて、額に軽くキスを落とす。
「そんなことで、泣くな。カスクアーロ。」
「…ふぇ…」
大体お前も、俺を名前で呼ばないくせに。
かすかにそう思ったのは口に出さず、ザンザスは愛しい恋人を、思い切り抱きしめた。
………後日。
「おい、カスクアーロ。」
「カはいらねぇ!!!」
まだ、鮫の苦労は耐えないようだ。
end
あとがき。
ガタガタガタガタ
すいませんでした。
ぐだぐだでした。
でも、すくあろがだいすきなんです。
(c)POT di nerezza A.Y I.A H.K