氷帝学園中等部テニス部。
部長。
跡部 景吾。
〇テニス部の災難〇
今日。跡部のキゲンが悪かった。
その理由を幾つか挙げてみよう。
理由@樺地が研修に行ってしまい、荷物を自分で持たなくては行けなかった。
理由A家を出るときに誤って右足から出てしまった
（彼は玄関から左足ででるといいことがあるというジンクスを信じている。）
理由B朝、一番最初に見た鳥がカラスだった。
理由C朝、黒猫が横を走っていた。
理由Dその他いっぱい。
主に@が原因らしい。
………ともかく、そんな理由で跡部はキゲンが悪かった。
それは、部活中も続く。
「…………………（仏頂面）」
不機嫌の極みという表情の跡部。
今、跡部に何かを言えば部長の権力を使って、何をされるかわかったものではない。
「な、なんとかしろよ…！ゆーし！！」
「そんなん無理やわ。オレかて命が大事やもん！！」
コソコソ小声で言い合うD2の二人。
「あ〜ん？」（１オクターブ低。）
跡部がくるりと振り返り、二人をギロリと睨んだ。
「テメェら何コソコソやってやがんだ？言いたいコトあんならとっとと言え！！」
「な…なんでもない…なんにもない…」
「そや…気のせいやと思うで？」
忍足、岳人はそう言いながら、慌てて走り去る。
フンッと鼻を鳴らして、跡部はその後姿を見送った。
数分後。
「おい宍戸！！」
跡部は1人素振りする宍戸を呼び止めた。
「何か用かよ」
宍戸は跡部に負けず劣らずの超不機嫌顔で聞き返す。
「何、シケた顔してやがんだよ」
「テメェに言われたかねぇよ」
「あ〜ん？オレ様がいつテメェみたいにシケた顔してたっつーんだよ」
「フンッ。激ダサだな。そんな面下げて。人の事言えんのかよ」
いつもの口喧嘩。だか、今日はいつもと少し違う。
「ふざけるなテメェ！！」
「それはこっちの台詞だ！！」
二人の喧嘩はどんどんエスカレートしていく。
そう。今日は止める人間――――樺地とか鳳とか――――がいないのだ。
「落ち着けってばー！！宍戸！跡部！」
「「うるせぇ！！」」
「えらい息ぴったりやな…」
「「何か言ったか！？」」
「…恐いわ…ホンマに…」
「やるねーーー」
「…んー…うるさいCー」
ぎゃあぎゃあ五月蝿い宍戸と跡部。
止める事など不可能。
「侑士早く止めろよ」
「アホ。オレかて命は惜しい言うたやろ」
「やるねー。」（何
「ZZZ…」
忍足は嫌な顔をしながらゆっくり二人の間に入っていく。
無論、自分の意志ではなく、岳人他部員の皆に強制的に押し出されたようなものだ。
「…なぁ…跡部、宍戸？」
「あ？」 「んだよ」
（…あ〜んあらへん！！）
「なんだよ忍足」
「いや…あの…喧嘩は…あかんねんで？」
「はぁ？」
跡部は下から忍足を睨みつける。
「･･･樺地がおらんでイラついとんのはよぉわかるで？」
「んな訳ねぇだろ！」
「お前もや宍戸。鳳おらんからてそないに荒れるなや」
「長太郎は関係ねぇよ！！」
「関係ないんやったらそないに反応する訳ないやろ」
そうい言われて、二人に返す言葉はない。
「･････････」
「･････････」
しばしの沈黙の後、跡部が口を開く。
「･･･全員･･･グラウンド２００周」
「「「「「「「ヘッ・・・！？」」」」」」
「今すぐ走って来い！！じゃなきゃもう５０周追加すんぞ！！」
「･･･何やてぇ！？」
「さいてー、跡部ー！！八つ当たり反対ーーー！！」
「･･･や･･･やるねー･･･」
「･･･嫌だC−･･」
文句を言いはじめる忍足を始めとした四人＋その他の部員。
「うるせぇ！！部長は俺だーー！！」
跡部が怒鳴る。
その声と共に全員が走り始める。
「テメェもだ、宍戸」
「はぁ？」
「じゃなきゃレギュラー外す」
「･･･！！」
これを世間では独裁者という。
その後も跡部の機嫌は直らず、氷帝テニス部の部員は、八つ当たりをにただひたすら耐えたと言う。
二年生の研修が終わり、帰って来た長太郎と樺地を皆が泣きながら迎えたのは言うまでもない事実である。
「･･･ほんまによう帰ってきてくれなはったなー！！」（泣
「ウス」
「どうしたんですか？皆さん･･･」
「･･･下克上」
1人相手にされなかった日吉の呟きは誰の耳にも届かなかった。
END
▽あとがき▽
･･･すみません･･･。
跡部は樺地がいないと生きていけないと思うんですよ･･･。
宍戸さんも長太郎がいないと…
そこを書きたかったのです･･･。
最後の日吉は出番がなくてあまりに可哀相で･･
･･･やっぱり修行がたりませんね。
お目汚し失礼しました。
藍薙 維麻
(c)POT di nerezza A.Y I.A H.K
